希望と媚薬

『愛の反対は憎しみではなく無関心です/マザー・テレサ』 『批判書いてる間は俺の事を考えてる。だから俺の事好きなんだなって変換してます/手越祐也』

そう僕らは生き続けてきた


自分のベッドと学校だけが世界の全てだったあの頃。

自らの手で選び取った非日常が世界はもっと広いことを教えてくれた。

今なら分かることも多いのだけれど、
あの時の私はとにかくどうして生きてるだけでいいと言ってくれないんだろうと叫びたかった。

学校に行くのが普通で当たり前だから、
だから行かなくてはいけない狭い世界はそこで完結していて、
みんなよりも遅い時間に歩く通学路は纏わりつくスカートがひたすらに重くて。

見上げた空のガラス張りの冷たさを今でも覚えている。

今から8年前の今日、とても未完成な私。

東京ドームって卵みたいだと思ったのを覚えている。


進路を決めなければ、いや、他のみんなはとっくに決めているような時期に、
私は薄いチケットを握りしめて、
Perfume初の東京ドーム公演に参戦したのだった。

ライブの内容自体の素晴らしさを語り出すと、
それだけで終わってしまうので割愛するが、
私は確かにこの時、存在そのものを許されたのだと思う。

一言で言うならば「あなたが今この瞬間そこにいてくれるだけでいい」
という、ずっと欲しかったものを無条件に与えれられる場が、
私にとってPerfumeのライブだったのだ。


「この人がいなければ今の自分はない」
そう言い切れるような、人生を変えてくれた出会いがあるとするならば、
私にとってそれはPerfumeの3人との出会いに他ならない。

東京ドームに行かなければ、きっと高校にも行かなかったし、
今頃どこで何をしているか分からない。
否、多分もう明日を生きることを諦めていると思う。

けれど、また3人に会いたい。胸を張って。

その想いが私を高校入学へ導いてくれたし、
入学してからはバイトも始めて、
人生初の遠征もPerfumeのツアーに捧げた。

夜行列車ムーンライトながらには、
出張終わりであろうサラリーマンしかいなくて、
空になったビールが置かれた座席の横に恐る恐る座ったのを覚えている。


高校を卒業し、これがもう最後だと思って、
泣きながらステージを見上げていたツアーや

自分の好きの形が怖くて、わざと距離を取っていた時期、

ここには書き表せないほどの沢山の思い出がある。

どんな時も3人は私の特別だった。
胸の奥で輝く大切で壊れない宝物であり続けた。

あれから、8年。

とっくに東京ドームのステージに立っていた3人よりも歳上になってしまった。

ビールだって飲めるし、遠征も慣れてきたと思う。

去年、東京ドームに立っていたあの時の3人と.
同い年になったことをきっかけに、夢に向かって転職を決めて、
今年になって初めて一人暮らしも始めた。
なんだって半分の生活だけど、なんとか自分の力で東京に住んでいる。

絵に描いたようなワンルームも、3人がいればそこはディスコだ。

こんな未来が来るなんて思えない過去を積み重ねてきたのに。

毎日を生き抜くことが精一杯で、一日が物凄く長くて、
明日が来るのが怖くてベッドの中に閉じこもっていた8年前。

正直に言って、明日が来るのは今でも怖い。

嘘、明日を生きたいと願う勇気がない。

だけど、この8年間Perfumeと生きて、生き続けてきて、
世界はもっともっと広いことを知った。

そして、Perfumeのライブという唯一の、
嘘をつかずにありのままの私でいられる
居場所があると思うと、起き上がれる力が湧いてくる。

それも3人がPerfumeを続けてくれるという
強くて儚い覚悟の上に成り立っていると思うと、何度感謝しても足りない。

あの時の3人よりも歳上になった今、
8年前に聴いた「これは運命なんだね」に
「確かにそんなようだね」と返すことができる。

私が3人を好きになることも人生が変わることも、
きっと運命だったけれど、それを肯定できるのは、
3人はステージの上で、私は客席で生き続けることを選び取ってきたからだ。


あの時に漠然と思っていた、もしも生き続けていられるとしたら、
私がこうして辛かったことも、もしかしたら
いつか誰かのためになるのかもしれないということも、
少しではあるけれど、実現している。

8年目の今日、3人に会いに行けるのは、
8年前の今日、3人に会いに行こうと決めた自分のおかげ。

たった1日しかなかったこの日のライブで、
5万人分の1でいられた奇跡を私はこれからも抱きしめていくだろう。

きっとPerfumeを好きでいることは、
私が生きている証拠だから。